オススメのジャズ映画 『ジャズ大名』ポップな娯楽志向が合体した怪作
オススメのジャズ映画 『ジャズ大名』
「ジャズ大名」は、1986年の日本映画。 監督は岡本喜八(おかもと・きはち)。原作は筒井康隆の同名小説によるもの。出演者は古谷一行、 財津一郎、ミッキー・カーチス、殿山泰司、タモリ、細野晴臣、山下洋輔、 六平直政など。
【あらすじ】
アメリカで南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョーは、バーモント近くの激戦地跡で弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に出会った。彼らはニューオリンズから船に乗り、故郷のアフリカへ帰るため楽隊でもやって船賃を稼ごうと、ジョーが中心になって演奏を始める。ボブのクラリネット、ルイのコルネット、サムの太鼓、ジョーのトロンボーンと、繰り返し演奏するうち、曲は軽快にジャズらしくなり、4人は夢中になり始める。やがてメキシコ商人にだまされた4人は、香港行の船の中にいた。ある日、ボブが鳴らなくなったクラリネットを前に病死する。嵐の中で三人はボートで逃げ出し、彼らのボートは駿河湾の庵原藩に打ち上げられた。庵原藩の藩主、海郷亮勝は大の音楽好きで、家老の目を盗んではふところから篳篥(ひちりき)を出して吹いている。彼には文子と松枝という二人の妹がいた。ジョーたち三人は医師の玄斉の許へ運び込まれる。亮勝は彼らたちに一目会いたいと願うが、家老の石出九郎左衛門は許してくれない。江戸幕府からは、黒人の処分は亮勝に任せるとの命令が入った。亮勝は城の地下座敷牢にジョーたちを入れる。江戸から世継ぎ誕生の知らせが入り亮勝は喜ぶが、松枝のひと言でそれが不義の子だとわかる。監督不行届を恥じた九郎左衛門は、切腹をすると騒ぎだす。亮勝は切腹と交換にジョーたちと会うことにした。鈴川門之助を通訳に、亮勝は彼らが流れつくまでの話を聞く。そしてサムが桶をひっくり返し、火鉢の火箸で叩き始め、ルイがコルネット、ジョーがトロンボーンとジャズ演奏を始める。亮勝はボブのクラリネットを直し吹き始めた。格子戸を外した座敷牢は、一転ステージに変わる。ジョーたちの演奏に、城中のものが鼓と横笛、算盤、薩摩琵琶、琴、鍋、釜、桶、三味線などで加わり、大ジャムセッションが始まった。その上を江戸に向かう討幕派、彼らと敵対する幕府の兵、百姓一揆たちが駆けぬける。亮勝が彼らのために城を開通させたのだ。やがて夜が明け、新政府軍、殿銃隊が朝もやの中に消えて行く。
【感想】
明治元年と言えば1872年なのでジャズという音楽は出来ていませんが、多分黒人が適当に始めた音楽がきっかけとなったところで、辻褄が合わないことはないでしょう。歴史的考証は元々が筒井康隆のSF小説なのでさておき、日本の江戸末期の動乱期に、ジャズが日本でブームになった「ええじゃないか」と合体して狂喜乱舞するというところは、さすがに筒井御大の独特な発想という点で大いに笑え、その原作を変に脚色することなく筒井作品らしく映画に仕立てた岡本監督の快作です。出演者もタモリを始めとする、筒井康隆の周辺人物であるピアニストの山下洋輔や、細野晴臣、唐十郎、監督の岡本喜八までが出演しているカルトムービーとして、一見の価値アリの映画です。