ジャズ映画『ワイルド・マン・ブルース』クラリネット奏者としても有名なウディ・アレンに密着したドキュメンタリー
『ワイルド・マン・ブルース』
「ワイルド・マン・ブルース」は1997年のアメリカ映画。監督は「アン・ハサウェイ/裸の天使」のバーバラ・コップル。製作は「ブロードウェイと銃弾」のジーン・ドゥーマニアン。製作総指揮も同じく「ブロードウェイと銃弾」のJ・E・ボーケア。映画監督のウッディ・アレンがプライベートで行っているジャズバンドのライブツアーをドキュメントで描いた作品。尚、本作はドキュメンタリー映画なのでシナリオはありません。
ウッディ・アレンは映画監督とは別の顔を持っています。趣味が高じてジャズ・クラリネット奏者としても活動をしており、ニューオリンズ・ジャズを演奏しています。ニューヨークの「マイケルズ・パブ」のレギュラーバンド「ウッディ・アレン・アンド・ヒズ・ニューオリンズ・ジャズ・バンド」のリーダーとして、毎週月曜日の夕方にクラリネットを吹くという習慣を数十年間に渡って続けています。「アニー・ホール」でアカデミー賞を受賞した時も、クラブでの演奏を優先して授賞式の方をキャンセルしてしまったほどです。また、彼は自作の映画の中でもジャズをBGMとして多用することが多いことでも知られており、音楽に関する映画も「ラジオ・デイズ」や「ギター弾きの恋」などで、そのオタク振りを発揮しています。
作品内容はドキュメントなのでシナリオらしきものはありませんが、ヨーロッパに向かう自家用機内での、犬嫌いの会話から始まりアレン節が全開です。最初の演奏会場はスペインのマドリードにも拘わらず、パリで一泊しヨーロッパの空気に馴染んでからとか、まぁプライベートなのでわがまま放題で、シニカルで自虐的なお馴染みのトークもあり、彼のキャラクターがよく表れて笑わせてもらえます。たまに映画にもちょくちょく顔を出す人ですが、その映画の演技と素の表情が全くおなじだというところも発見できます。
肝心の演奏はというと、プロ顔負けのテクニックを披露するわけではありませんが、ちゃんとギャラをいただけるレベルの演奏はキープしており、円熟味を帯びたディキシーランド・ジャズが披露されています。
ヨーロッパのツアーというところからか、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の映画から、ニーノ・ロータの音楽を流用したり、全体に彼の音楽に対する造詣の深さがよく描かれている作品です。