ジャズ映画『バード』 クラブの演奏シーンが格好いいイーストウッド映画

ジャズ映画『バード』

「バード」(原題:Bird)は、1988年のアメリカ映画。 監督は「ダーティハリー4」、「ファイヤーフォックス」などの監督でも知られる俳優のクリント・イーストウッド。主演のサックス奏者チャーリー・パーカー役に、 「ハスラー2」、「グッドモーニング, ベトナム」のフォレスト・ウィテカー。共演はダイアン・ヴェノーラ。ジャズサックス奏者チャーリー・パーカーの音楽と生涯を描いた伝記作品。カンザスシティで過ごした少年時代、チャン・リチャードソンとの結婚、そして34歳で夭逝するといった生涯の各場面をコラージュによって構成する手法を用いた。

ジャズ映画 バードのあらすじ

ーアメリカ人の生涯に二幕目はないー

1954年9月1日、自殺を図り精神病院に収容されたバードの脳裏に、16歳の時の故郷カンサス・シティでの記憶、ヘロイン中毒で亡くなった父の遺体、そしてレノ・クラブでのコンテストで自らの未熟さにより演奏を中止され、シンバルを投げられた屈辱が走馬燈のように蘇る。そして1943年、ニューヨーク52番街のクラブでディジー・ガレスピーらと共に”ビ・バップ”を生み出し、成功を収めつつあるバードの演奏に、観客は熱狂していた。その頃に彼はダンサーのチャン(ダイアン・ヴェノーラ)と出会い、バードの音楽には惹かれながらプロボーズに応じない彼女に、サックスを質に入れ白馬を借りて、仲間の演奏をバックにチャンを迎え、ようやく彼女のハートを射止めた。やがて彼らは西海岸に進出するが、そこではビ・バップは侵略者扱いされ、バードは酒浸りとなり入院、彼が再びニューヨークで仕事に復帰できたのは妻チャンの献身的な努力からだった。1949年はバードにとって飛躍の年となり、パリでのコンサートや、自分の名を付けられたライヴハウス「バードランド」の開店。そして白人トランペッター、レッド・ロドニー(マイケル・ゼルニカー)を伴い、アメリカ南部への楽旅で成功を収める。しかしレッドが麻薬不法所持で逮捕され、ニューヨークで仕事が困難になったバードがロスに旅立った頃から影が差し始める。娘ブリーの病死によるノイローゼからの自殺未遂で、ショック療法の勧めを断ったバードは、一家でチャンの故郷に移り静かに暮らそうとするが、彼は再び仕事に出ねばならなかった。

やがて52番街の変貌に驚くバードは、かつて自分がホームグラウンドとしていた、パラマウント劇場でのロックンロールのライヴに入り込み、過去に自分をクビにしたミュージシャンが演ずる“新しい音楽”を目にして愕然とする。街を彷徨い打ち合わせに遅れたバードに、プロモーターはチャンへ電話するよう勧める。バードから連絡を受けた彼女は、電話の向こうでいつになく優しく、それが最後の電話と予感しているかのようにバードに語りかけた。そして1955年3月12日、チャーリー・“ヤードバード”・パーカーは心臓麻痺で亡くなった。享年34歳。検死官は遺体を見て60過ぎの黒人男性と電話で報告した。


【感想】

ジャズの世界でディジー・ガレスピーと共に、ビ・バップの産みの親として伝説となったチャーリー・パーカーの伝記です。クリント・イーストウッドの自らが出演していない監督作品としては初の映画であり、彼のジャズに対する思い入れが充分に伝わってきます。チャーリー・パーカーという伝説のミュージシャンを題材にするというのも、イーストウッド以外の監督では思いつかなかった内容ではないでしょうか。この作品に似ているといえば、後年に作られたレイ・チャールズの伝記として有名である、2004年の「Ray」がありますが、両者共が音楽と麻薬に翻弄され苦悩の人生を歩んだという点で、R&Bの王様とジャズの王様の生き様は似ている感じがします。映画の中では、チャーリー・パーカーが残した数多くの名演がライヴ形式で撮影され、ミュージシャンの演奏姿や街の風景など、リアリティに溢れた音楽ドキュメントのような作りが、1940年代のニューヨークを見事に描き出されています。パーカーを演ずる主演のフォレスト・ウィテカーの演技も見事であり、どこか憎めないにこやかな風貌が、テクニカルで機械的とも言われる演奏で有名な、パーカーに反するような人間的らしさを強調して、今まで持っていたパーカーへのイメージが変わるような新鮮さも垣間見られます。そしてパーカーを支える妻のチャンを演じる、ダイアン・ヴェノーラの演技が素晴らしい。常にパーカーに振り回されながらもクールに装い、天才肌で我の強い音楽家に対し、感情を押し殺し手玉に取りながら献身的に支える女性を表現しています。チャン本人は映画の撮影に関してイーストウッド監督に随分と協力をしていたらしく、その辺のディティールも忠実に再現されているのでしょう。

そしてディジー・ガレスピーとの友情や、アメリカ南部への旅のシーンなど感動するような場面も多く、イーストウッド監督のやりたかった事が凝縮された素晴らしい作品に仕上がっています。

レクタングル(大)
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