おすすめのジャズ映画 『ギター弾きの恋』 音楽でしか表せない哀れなミュージシャンの切なさ

ジャズ映画 ギター弾きの恋

「ギター弾きの恋」(原題:Sweet and Lowdown)は、1999年のアメリカ映画。 監督は「アニー・ホール」、「ハンナとその姉妹」などでオスカーに輝いたウディ・アレン。主演のギタリスト、エメット・レイ役に、 「デッドマン・ウォーキング」、「シン・レッド・ライン」の個性派俳優ショーン・ペン。共演はサマンサ・モートン。ショーン・ペンは本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、サマンサ・モートンは助演女優賞にノミネートされた。

あらすじ

1930年代のシカゴ。派手で目立ちたがり屋のエメット・レイ(ショーン・ペン)は、才能あふれるジプシージャズを演奏するギタリストだった。音楽に身を捧げる一方で娼婦の元締めを兼業したり、裏社会に顔の通じる破滅的な人生を送っていた。女癖が悪いエメットは、公演先のニュージャージーの浜辺でナンパした、口の不自由な娘ハッティ(サマンサ・モートン)と出会って以来、二人は付き合うようになる。しかしエメットは駆け出し作家の派手な美女ブランチ(ユマ・サーマン)に惚れ、ハッティと別れブランチと衝動的に結婚してしまう。だが派手好きな二人の夫婦関係は破局が目に見えており、案の定、ブランチはジャズクラブの用心棒アル(アンソニー・ラパグリア)との不倫に溺れてゆく。裏切りと失意の中で虚ろに日々を送るエメットだったが、音楽性は日増しに向上し良い仕事に恵まれ始める。仕事が順調に進み始めると同時に、エメットは愛に目覚め、自分に本当に必要だったハッティを求め再びニュージャージーを訪ねるが、彼女はすでに他の男と結婚していた。

感想

ギタリストとポン引きを兼ねている主人公のエメットが何ともいい味を出し、ダンディーでありながらも気が弱く、いかがわしさが漂うという役が、賞賛の意味も込めてショーン・ペンにピッタリ嵌っています。ウッディ・アレンのコメディとして作品の内容的には、まぁこんなものだろうという感じですが、口のきけない娘でいつも何かを食べている、ハッティ役のサマンサ・モートンの表情が何ともキュートです。多分売春宿の娼婦にばかり囲まれていたというギャップなのでしょうが、エメットの煮え切らない態度に観る方がイライラするようなシーンもあり、芸術家を気取り自分を騙すように虚勢を張ることしかできず、心の内を音楽でしか表せない哀れなミュージシャン役を演ずるショーン・ペンの演技は見事です。ネタバレですが、最後にヤケになってギターを叩き壊してしまうシーンはちょっと違うんじゃないかなぁ。
ギターに関してのウンチクを傾けると、主人公エメットが使っている楽器は、1930年代にこの映画にも登場するエメットが恐れおののくギタリスト、ジャンゴラインハルトが使用して有名になった、フランスのセルマーというメーカーのマカフェリというギターで、当時アメリカには輸出されていなかったのです。しかも1932年から1952年までの20年間に1,000本しか作られなかった超レアな銘器であり、主人公のエメットがどういった経緯で入手したかは知りませんが、もしそんなギターを手にしていたとしたら、失恋ぐらいでぶち壊すというような事はしないでしょう。レプリカが制作され始めたのも1952年からであり、まぁ、ギター好きな人が観たら噴飯ものの話なのですが、果たしてそこまでハッティの結婚が辛かったのでしょうか。
ミュージシャンなら命と同じくらいに大切なギターですから、ウッディ・アレン監督のケアレス・ミスという感じでしょうか。彼はクラリネット奏者ですからそんな事が分からないことはないと思うのですが、映画だからって音楽家の楽器に対する想いはもっと描けた気がするのですが。そんな人間もいるという事なのですかね。何か残念です。

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