おすすめのジャズ映画『グレン・ミラー物語』 トロンボーン奏者グレン・ミラーの生涯を名匠アンソニー・マン監督が描いたジャズ映画の名作
ジャズを題材にした映画はそう多くはありませんが、それをテーマにしたものは名作が多く、心に染みいるシーンが残るものばかりです。映画監督でジャズ好きと言えばウッディ・アレンとクリント・イーストウッドが筆頭に挙げられます。そして古くからジャズマンを主人公にした名作映画も多く、劇中で素晴らしい演奏も観ることができます。ジャズを知るという点ではビジュアルから入るというのも現在の選択肢のひとつでしょう。ジャズマンが主人公でなくても、映画の中で有名なスタンダード曲が挿入されている映画もあり、そういった部分からもジャズを知る手掛かりが掴めるかも知れません。ここでは素敵なジャズの名曲が楽しめる映画の数々を紹介してゆきます。
『グレン・ミラー物語』
「グレン・ミラー物語」(原題:The Glenn Miller Story)は、1954年のアメリカ合衆国の映画。 監督は「ウィンチェスター銃’73」「怒りの河」のアンソニー・マン。主演のグレン・ミラー役に「フィラデルフィア物語」でオスカーに輝いたジェームズ・スチュワート。共演は「若草物語」のジューン・アリソン。
ジャズトランペッターのルイ・アームストロング。
【あらすじ】
若いトロンボーン奏者グレン・ミラー(ジェームズ・スチュアート)は、貧しい生活の中で新しい音楽を創る夢を描いていた、ある日、偶然にもグレンの編曲した作品がベン・ポラックの耳にとまり、ポラックの編曲助手として採用され彼の楽団と一緒に演奏旅行に出かける。大衆音楽の新しい表現へ努力を続けるグレンは、興行師に認められたのを機にポラックの許を去り、2年間編曲に専念したが成功しなかった。彼はこの原因を愛するヘレン(ジューン・アリソン)のいないことだと考え、直ちに長距離電話でヘレンを呼び出しプロポーズをする。式はニューヨークの小さな教会でささやかに挙げられた。グレンは、ヘレンの薦めで本格的に作曲の勉強を始め、まとまった貯金もでき楽団を編成する。やがてボストンで出演する予定が、途中事故のため楽団は解散。妊娠中のヘレンも健康を損ね入院してしまう。ミラーの不幸を知ったボストンのクラブ経営者は、グレンに資金を提供し、楽団を再編成させクラブに出演依頼をする。そこで偶然にもトランペッターが唇を痛めており、彼のスコアをクラリネットに書きかえて演奏させたが、それがグレン・ミラー・サウンドの誕生となる。長男が生まれ、演奏も大当りでレコードも飛ぶように売れた。ハリウッドからも招かれ、絶頂を迎えたときに第二次大戦が勃発する。グレンは志願して空軍に入り、兵隊募集のための演奏を続け、ヨーロッパ戦線へ慰問旅行に出かけた。クリスマスの日にグレンはパリから米国向けに特別放送をすることになり、その番組でヘレンたちに呼びかけようと決心する。そしてロンドンからグレンを乗せてパリに向かった飛行機は、ドーバー海峡上空で消息を絶ち遂に帰る事はなかった。
グレン・ミラー物語の行進曲シーンです。
【感想】
誰もが知っている名曲「茶色の小瓶」や「ムーンライト・セレナーデ」。それぞれの曲に彼の想いがありありと見え、貧しいながらも清々しく希望に溢れた彼の人生が描かれています。ジェームズ・スチュワートの眼鏡姿もグレン・ミラー本人にそっくりで、妻ヘレンの存在が何とも献身的で愛おしく描かれ、彼女の支えがなければ、彼のサウンドは生まれなかったのかもとも思えてきます。そういった二人のエピソードが丁寧に描かれているだけに、彼の訃報が伝わるシーンでは自然と涙がこぼれてしまいます。