ジャズのおすすめ名盤 ベース編
ジャズ・ベースの特徴
ジャズベーシストはとても地味な存在です。スタープレイヤーである管楽器や、その他のメロディ楽器の陰で的確にサポートをし続け、ほぼ休む間がなく大きな楽器を最後まで弾き通さなければなりません。ゆえに自己主張が少なく哲学的な風貌を持った人が多いというのも頷けます。基本的には”縁の下の力持ち”的存在ですが、音楽のスタイルが変化する中で、ベースも自己主張するようになりはじめ、曲の合間のアクセントでソロを取ったり、アドリブの掛け合いをするような展開が増えてきました。
ベースという楽器を大きく替えたのはギターと同じエレキベースという存在でしょう。アコースティックベースは大きな楽器でありながら、弾く(はじく)スタイルでは響きが小さく、マイクを使って音を拾わなければ管楽器やドラムの音に消されてしまいます。それをカバーするために出て来たものが、エレキというマイクを通して弦の振動を拾う楽器なのですが、弦楽器の音を増幅するためにはもってこいの救世主だったと言えるでしょう。ロックやポップスの世界では大々的に広まり、新しい音楽なのでそれがスタイルとして取り入れられるのが早く、アンプを通さなければ音が小さく、家の中で練習するのも迷惑になりにくいので、あっという間に世界中で使用されるようになりました。ジャズの世界は演奏スタイルが確立されていたため、浸透するのには時間が掛かりましたが、1960年代からのロックブームに触発されるかのように、ジャズの世界にも広まり、クロスオーバーという新しいスタイルも生まれました。
ジャズベースの開祖と言われる人として有名なのは、ジミー・ブラントンでしょう。デューク・エリントン楽団に参加し、ベースをソロ楽器として演奏した最初のミュージシャンです。メロディ感覚に優れ歌心溢れるフレーズは、後の演奏家にも大きな影響を与えました。そしてモダンジャズの巨人と言われるベーシストチャールズ・ミンガス、元祖MJQのレイ・ブラウン、マイルスの片腕ポール・チェンバース、パワフルなダグ・ワトキンス、コルトレーンの盟友ジミー・ギャリソン、”ミスターベース”ロン・カーター、エヴァンスの名パートナー、スコット・ラファロなど。またクラシックの影響からヨーロッパでは多くの優秀なベーシストが輩出されています。新時代からは天才ジャコ・パストリアス、マーカス・ミラーなどが有名どころです。ベースはリーダー作というものより、共演したミュージシャンのサポートが素晴らしいものが多く、リーダー作や名サポートでの名盤をご紹介します。
チャールズ・ミンガス
・『直立猿人』原始的ジャズの夜明け。ミラクルなミンガスミュージック。
・『ミンガス・アー・アム』実験的な音楽の中にもジャズの太い芯が通った名盤。
レイ・ブラウン
・『ザ・ビッグ3』3人のヴァーチュオーゾが癒しの空間を醸し出す。
・『ミッドナイト・セッション』いぶし銀の名人たちが奏でる絶妙のスタンダード。
ポール・チェンバース
・『ベース・オン・トップ』「イエスタデイズ」などのスタンダードで聴かせるアルコが圧巻。
・『ウィムス・オブ・チェンバース』ジャズベースの既製概念を塗り替えた天才の全貌が明らかに。
ダグ・ワトキンス
・『ワトキンス・アット・ラージ』夭逝のベーシストが残した野太い低音に見せられる一枚。
ロン・カーター
・『コットンクラブでカクテルを』ベースの神様がくり広げる大人のジャズ。
・『ジャズ&ボッサ』ボサノバのリラクゼーションが堪能できる陶酔の一枚。
スコット・ラファロ
・『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』エヴァンス+ラファロの最高傑作。
・『エクスプロレイションズ』エヴァンスとラファロ。ため息のインタープレイ。
ジャコ・パストリアス
・『ワード・オブ・マウス』天才という名を証明した奇跡のアルバム。
・『8:30』ウェザー・リポートの超ド級ライヴ。ジャコの超絶ベースプレイが圧巻
チャーリー・ヘイデン
・『スティール・アウェイ』名人ハンク・ジョーンズとの心に染みるデュエット。
・『ナイト・アンド・ザ・シティ』透明感のあるタッチに酔いしれる至高のデュオ。
ゲイリー・ピーコック
・『テイルズ・オブ・アナザー』キースとの「スタンダーズ」を彷彿とさせるトリオの名作。
・『星影のステラ』スタンダーズの名声を決定づけたピアノトリオの神髄。